通貨選択型エマージング・ボンド・ファンド・・・買ってはいけない典型事例

(2018年5月時点)

設立当初から多額の分配金を出して資金を集めた形跡のある怪しい毎月分配型投資信託。非常にコストが高く、金融機関側にとってはドル箱的な商品であろう。当然ながら運用成績は平凡であり、為替取引を無駄に取り入れた為に価格変動が非常に激しい。加えて過剰分配が非常に激しく、相場が悪化した現時点の基準価額の下落は恐ろしいレベルである。

通貨選択型エマージング・ボンド・ファンド

  • 極めて多額の分配金を出し続けるために、猛烈な勢いで基準価額が下落
  • 基本的に、自分の元本を取り崩しての分配が多いと見込まれる
  • この状態で運用が終了したら、あなたの資産はいくら減っているのか?
  • 債券投資の部分の運用そのものも、特に大した事はなし

 


9つのタイプが有る通貨選択型エマージング・ボンド・ファンドを解説


通貨選択型エマージング・ボンド・ファンドは、新興国の政府や政府機関の発行する米ドル建て債券に投資する投資信託です。そして、ファンド名称の冒頭に「通貨選択型」と付けられているように、新興国債券だけでなく、それと全く関係ない為替取引を抱き合わせた、複雑な投資信託です


エマージング・ボンド・ファンド


本来の「まとも」な資産運用であれば、新興国債券(エマージング債券)に投資するのみで十分なのですが、 それだけでは飽き足らず、特定の高金利通貨(豪ドル、ブラジルレアル、トルコリラなど)を抱き合わせて収益の底上げ(定期的な金利差の収益)を狙い、仕組みが複雑怪奇になってしまっています。

世の中、そんな楽して大儲けできる話しなど無く、収益の底上げを図る代償として為替のリスクを背負います。為替は債券投資と違ってギャンブル的な側面が非常に強く、コツコツ儲かる時期があるかもしれませんが、値動きによってはこれまでの利益を全て吹き飛ばす可能性を内在しています。

通貨選択型エマージング・ボンド・ファンドの運用イメージ


そのような通貨選択型エマージング・ボンド・ファンドにつき、当サイトでは、用意されている以下の9つのタイプに関して解説を加えます。各タイプ共に、投資の本質的なところは同一ですので、本ページを参考にして読み進めて頂ければと思います。

・エマージング・ボンド・ファンド・豪ドルコース(毎月分配型)
・エマージング・ボンド・ファンド・ブラジルレアルコース(毎月分配型)
・エマージング・ボンド・ファンド・トルコリラコース(毎月分配型)
・エマージング・ボンド・ファンド・円コース(毎月分配型)
・エマージング・ボンド・ファンド・ニュージーランドドルコース(毎月分配型)
・エマージング・ボンド・ファンド・南アフリカランドコース(毎月分配型)
・エマージング・ボンド・ファンド・中国元コース(毎月分配型)
・エマージング・ボンド・ファンド・カナダドルコース(毎月分配型)
・エマージング・ボンド・ファンド・メキシコペソコース(毎月分配型)




まずはエマージング・ボンド・ファンドの本質的なところからチェック


通貨選択型エマージング・ボンド・ファンドは、中南米・アジア・中東・アフリカなど、今後、経済発展の期待できる新興国地域が発行する国債を中心に投資します。

ただし、保有する債券の格付に注目してください。下記赤枠で囲ったBB格以下の保有債券は信頼性の悪い債券で、別名、ハイ・イールド債券と呼ばれます。基本的にこれは、投資に精通した熟練の投資家が取り扱うようなものであり、普通の個人投資家が安易に投資するべきものでないと思います。

通貨選択型エマージング・ボンド・ファンドのポートフォリオ


下記、ポートフォリオ全体でも投資不適格のBB格になっていますので、新興国の低格付けの債券に投資しているという認識が必要です。金融情勢が悪化した場合には平気で焦げ付きが発生するような、そういう投資先に資金を投じているという事になります。

債券投資の格付け


ただし、リスクを取ればリターンが高まるのは、投資の世界の常識です。ハイ・イールド債券に投資することで、年率5.2%程度のリターンが期待できるという事です。

しかし、ハイイールド債券のようなクズ債券に投資しても5%程度の利回りだという理解は、これから記述する内容に関連してきますので、頭に入れておいてくださいね。



全コースの基準価額が猛烈に下落&分配のつじつまが合わない状況も


通貨選択型エマージング・ボンド・ファンドの基準価額を見ていると、実に気持ちが悪くなってきます。というのも、全コースの基準価額が深刻なレベルで下落を続けているからです。下落し続けた結果、分配金を再投資したと仮定した場合のチャートに対して、乖離が極めて大きく発生しています。

通貨選択型エマージング・ボンド・ファンドの基準価額の下落


このような傾向を示す投資信託に出会ったら、まず、投資対象から外すことをおススメします。なぜなら、投資家の元本を取り崩す、過剰分配をしている恐れがあるからです。過剰分配とはタコ足分配の事であり、そのような事をされているのかどうか、まずは分配金利回りを調べてみましょう。

例えば、通貨選択型エマージング・ボンド・ファンドで人気トップ3の、レアルコース、豪ドルコース、リラコースの分配金利回りをご覧ください。これらはなんと、29%~36%もの数値になっています。こんな利回りが本当に実現可能なのか、ファイナンシャルリテラシーがある人は、すぐに変だと気が付きます。

ブラジルレアルコース・豪ドルコース・トルコリラコースの分配金利回り


この無茶苦茶な数字を出すために、この投資信託は「合わせ技」で分配金利回りを高める算段です。下記のように、債券の利回り約5.2%以外に、為替取引によるプレミアム収益がレアルコースで約3.3%、豪ドルコースで▲0.1%、リラコースで11.2%獲得できるとしています。(豪ドルコースは、むしろ足を引っ張る形になっていますね。)

ブラジルレアルコース・豪ドルコース・トルコリラコースの配当収益の源泉


しかし、この合わせ技で得られる利回りは、レアルコースで8.5%、豪ドルコースで5.1%、リラコースで16.4%です。それに対する現状の分配金利回りは、前述のように29%~36%にもなりますから、明らかに異常な水準です。過去3年の分配金利回りも、変わらず超高水準を維持しています。

このおかしな状況をチェックするには、続いて、運用報告書から「分配原資の内訳」を確認します。レアルコースは定期収益でカバーできているように見えるのですが(後述)、豪ドル、リラコースは、明らかな過剰分配が行われているのが分かります。

例えば豪ドルコースは100円を分配するのに20円ほどしか定期収益でカバーできない事になっていますので、その差は恐らく、かなりの人は元本払戻金が充当されているのではないかと推定します。自分で自分に分配金を出して、利益だと勘違いしている痛い状況になっている事でしょう。


●ブラジルレアルコース
通貨選択型エマージング・ボンド・ファンド、ブラジルレアルコースの分配状況


●豪ドルコース
通貨選択型エマージング・ボンド・ファンド、豪ドルコースの分配状況


●トルコリラコース

通貨選択型エマージング・ボンド・ファンド、トルコリラコースの分配状況


ところで、ブラジルレアルコースについては、毎月の分配金を定期収益でカバーできている理由がまったく分かりません。たとえばリラコースは、定期収益の利回り16.4%に対して分配金利回り36%なので、明らかに過剰分配だなと思いますし、現実にそうなっています。

ところがブラジルレアルコースは、定期収益の利回り8.8%に対して、分配金利回り29%で、数字がまったく合わないのに、分配状況は正常に見ます。これは、実におかしい状況です。

コース 分配金利回り 為替取引のプレミアム収入 債券の利回り 合計の利回り 分配状況
レアルコース 29% 3.3% 5.2% 8.8% 正常に見える
リラコース 36% 11.2% 5.2% 16.4% 超過剰分配


そこで、損益の状況も詳しく見てみます。リラコースの場合、(A)配当収益の2倍近くの(H)収益分配金を出しているので、想定通り、過剰分配状況です。また定期的に大きな売買損失(B)が発生していますので、最終的に内部では損失(次期繰越損益金)が増え続けています。典型的なダメそうな投資信託の数値です。

通貨選択型エマージング・ボンド・ファンド、トルコリラコースの損益計算書


次に、ブラジルレアルコースコースをチェックしてみます。まずブラジルレアルコースの(A)配当収益は、リラコースに比べて、10倍の収入があるように見えます。これは、とても理解ができる数値ではないです。

なぜなら、月次報告書に掲載の為替の金利差で得られるプレミアム収入は、リラコースよりブラジルレアルコースは1/3程度の小ささですので、ここの(A)配当収益も、圧倒的に小さくなるはずだと思います。それなのにリラコースの10倍の(A)配当収益があるのは、まったく理解できません。

数字上は、(H)収益分配金より(A)配当収益が大きくみえるので、一見すると問題がないように見えます。ところが為替のプレミアム収入を考えた場合は、まったく辻褄が合わず、納得できないですね。

通貨選択型エマージング・ボンド・ファンド、ブラジルレアルコースの損益計算書


また、ブラジルレアルコースはリラコースの10倍の売買損失を出し続けているので、上記でトータルの利益(D)は、赤字になる期もあります。結局、次期繰越損益金の赤字幅が大きくなっている状況を見る限りでは、内部で損失が膨れ上がっているとの理解になりますよね。

上記のようなブラジルレアルコースの分配金の状況をを考慮したかぎりでは、運用の仕組みが不透明な投資信託であるという判断になりますし、素直に感想を書くと「こんな分からんもんに投資していられるか!」という事になりますね。



「債券投資」の部分の運用成績も、実に大した事が無いのが分かる


そもそも、通貨選択型エマージング・ボンド・ファンドの債券投資自体のパフォーマンスが良いのか(あるいは悪いのか)、その投資判断も重要です。このような複雑な投資信託の運用成績はパッとしない事が非常に多いですから、この点のチェックはどうしてもやっておくべきですね。

参考コラム、人気の投資信託でも運用成績はヘボい実例集も併せてお読みください。アクティブ運用なのにベンチマークや参考指数が無いので、ファンドマネジャーの腕前が、まったく分かりません。

高金利通貨の為替取引を抱き合わせる投資信託は、中身が複雑なので運用のチェックが困難ではありますが、今回は幸いな事にエマージング・ボンド・ファンド・円コース(毎月分配型)があります。これは為替ヘッジがあるタイプの新興国債券ファンドなので、野村インデックスファンド・新興国債券・為替ヘッジ型(愛称:Funds-i 新興国債券・為替ヘッジ型)と比較できます。そして、結果は以下の通りです。

通貨選択型エマージング・ボンド・ファンド、円コースとインデックスファンドとのリターン比較


これを見ると、通貨選択型エマージング・ボンド・ファンドが顕著に運用成績が良いとは言えないように見えます。しかも通貨選択型エマージング・ボンド・ファンドの高額な売買手数料(3%)を考慮すると、実質、負けているとも言えます。

これならば、シンプルにインデックスファンドに投資していて良いですね。ただし、インデックスファンドは分配金が出ませんので、どうしても毎月分配のような形を取りたかったら、SBI証券の定期売却サービスを利用して保有したほうが、はるかに健全な毎月分配型投資信託になります。

参考までに、当サイト管理人も新興国債券に投資しており、定期的にタコ足でない分配金を受け取っています。管理人は上場インデックスファンド新興国債券というETFを使って、極めて低コストで、それこそ一生涯の運用で分配金を受け取り続ける事になると思います。

為替を抱き合わせたりするような妙な運用をやって、投資家無視のタコ足分配などもやりまくって、運用が終わるころには無残な姿になった基準価額で償還された日には、今後の生活にも支障をきたしかねません。そのような投資信託は、絶対に避けなくてはなりません。



エマージング・ボンド・ファンドの概要


購入手数料:上限3.24%(税込み)
信託報酬:年率1.6884%(税込み)
信託財産留保額:なし
分配金の取扱:年12回
償還日:平成31年7月16日(設定日 平成21年7月17日)
運用:大和住銀投信投資顧問株式会社

なお、投資信託選びで最も重要なのはコストです。コストが高いファンドは、そのコストのために運用成績で自滅する宿命にあります。(よく覚えておいてね)



エマージング・ボンド・ファンドの購入先


エマージング・ボンド・ファンド・ブラジルレアルコース(毎月分配型)で分配金を得たい場合、せめて手数料0円プログラムのある、フィデリティ証券が良いでしょう。

手数料3.24%SBI証券楽天証券マネックス証券フィデリティ証券


 



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